特別清算
特別清算とは,解散決議を経て通常の清算手続を行っている株式会社について,清算の遂行に著しい支障を来すべき事情又は債務超過の疑いがある場合に,利害関係人(清算株式会社は含まれておりません)の申立てにより開始される特別な清算手続です。会社法の中に株式会社の特別清算に関する規定があります。
特別清算は,債務超過等の株式会社を清算するものであり,同じ目的の手続として破産があります。しかし,破産と比較して次のようなメリットがあります。
第1に,「破産」ではなく「清算」と呼ばれるため倒産のイメージが薄いことです。とくに,親会社等が子会社や関連会社(以下「子会社等」といいます。)を清算する場合には子会社等を「破産」させたという悪いイメージがありません。
第2に,親会社等が子会社等に対し債権を有する場合,親会社等は回収できなかった債権を無税で償却が可能となります(この点は,破産手続も同様です)。
第3に,破産手続においては,破産会社の財産を破産管財人が管理・換価を行うのに対し,特別清算手続では,清算人がイニシアティブをもって手続を進めていくことができることが挙げられます。特別清算は,破産に代わる簡易・迅速な手続ともいえ,次に述べるような事業承継と組み合わせることができます。
第4に,昨今,社会経済的にも「事業承継」の必要性が指摘されていますが,債務超過の株式会社の場合,事業を第三者に承継させるにしても,残った株式会社の法人格の処理に困りますが,特別清算によりスムーズに残った法人格の処理ができます。
特別清算には,協定型と和解型があります。債権者との協定により債務の免除を受け会社を清算するのが協定型です(手続の流れは別紙のとおりです)。この協定の成立には債権者集会に出席した債権者の過半数の同意と債権者の議決権の総額の3分の2以上の同意が必要です。これに対し,債権者との協定に代わるものとして債権者全員との個別的和解により清算を行うのが和解型です。税務上の理由から親会社が子会社等の特別清算を選択した場合には,後者を利用する例が多く見受けられます。
特別清算手続を円滑かつ迅速に進めていくためには,通常清算手続に入る解散決議の前段階からの事業廃止・事業承継等の企業再編のスキーム作りやスケジュールの組立てが重要になります。通常清算手続・特別清算手続では,債務の弁済及び財産の処分等に制限があり,事業譲渡,日々の取引により発生した債務の弁済,清算株式会社所有の不動産の処分等をスムーズに行えなくなってしまう可能性があるからです。
法律事務所では,特別清算手続の申立代理人としての経験を有しており,各案件に沿った事業廃止・事業承継等の企業再編のスキーム作りやスケジュールの組立て等,特別清算手続の終結までサポートさせていただきます。
流れ図をクリックすると拡大表示されます。 特別清算手続の流れ図:PDFはこちらから