仮処分・仮差押え
仮処分・仮差押えは,保全するべき権利の内容や対象となる目的物(債権か不動産か等)に応じ,主張するべき内容が大きく異なります。
また,目的物の隠匿,処分等を防ぐために他の債権者や債務者に情報が漏れないよう密行性を確保することが,最も重要となります。
1.仮処分(処分禁止仮処分)
例えば,売主と買主との間で動産の売買契約が締結され,売主が,買主に対して動産の引渡しを行ったものの,買主が,売主に対して,売買代金支払期日に売買代金を支払わなかった場合,売主としては,売買代金不払を理由に,直ちに売買契約を解除し,引渡済みの動産を回収したいと考えるのが通常です。
ところが,売主が,買主に対して,売買契約を解除し,動産の引渡しを求める民事訴訟を裁判所に提起したとしても,裁判所の判決が下されるまでに6か月から1年程度の時間がかかる場合があります。そのため,民事訴訟中に,買主が当該動産を第三者に対して売却してしまうおそれがあります。買主が,当該動産を第三者に対して売却すれば,売主の買主に対する動産引渡請求権は履行不能となり,売主による債権回収が妨げられます。
そのため,民事訴訟提起前又は民事訴訟係属中に,買主による動産の処分を禁止する仮処分を申し立てることが,債権回収のために有効な方法になります。
2.仮差押え(債権仮差押え)
買主(債務者)に対して売掛金債権を有している売主(債権者)が,当該売掛金債権の回収を行うにあたり,買主が第三者から金銭の支払を受ける予定であるという情報を入手した場合を想定して下さい(当該第三者を「第三債務者」と呼びます。)。売主が,直ちに買主に対して民事訴訟を提起し,勝訴判決を得て買主の第三債務者に対する債権を差し押さえたいと考えても,民事訴訟に通常要する時間を踏まえると,勝訴判決を得た時には,買主の第三債務者に対する債権が消滅しているという事態が想定されます。
そのため,民事訴訟提起前又は民事訴訟係属中に,買主の第三債務者に対する債権について仮差押えをするということが,債権回収のために有効な方法になります。
また,仮差押えは,債務者にとって,銀行取引停止事由となっている場合や,業務委託契約の解除事由とされている場合がありますので,そのような事態を避けるため,債務者が,債権者に対して債権相当額を支払うことを条件として,仮差押えを取り下げるという内容の話合いがまとまることもあります。
法律事務所は,様々な被保全権利に関する仮処分・仮差押えのノウハウを有しておりますので,ご依頼の皆様の権利を確実に保全することができます。