遺言執行者
遺言執行者とは,遺言の内容を法的に実現する者をいいます。遺言にはその内容を実現するのに執行(所定の事務)を必要としないものもありますが,執行を必要とするものもあります。例えば,相続財産のうちのある土地と建物を特定の相続人に遺贈する場合(特定遺贈)には,目的物を管理し,引渡しおよび登記等の一連の執行が必要となります。
これらの事務は相続人自身が行うこともありますが,ときには相続人の利益と相反する場合もあります。また,専門的な知識や経験が必要な場合もあります。そこで,法は遺言執行者の制度を設けました。
遺言執行者の指定は,遺言の中ですることができます(民法1006条)。遺言執行者がないとき,またはいなくなったときには,家庭裁判所が利害関係人の請求によって,選任することができます(民法1010条)。
遺言執行者の主な職務は,次のとおりです。
- 相続財産の財産目録を調整して,相続人に交付します(民法1011条)。
- 相続財産を管理し,かつ遺言の執行に必要な一切の行為をします(民法1012条)。例えば,遺贈の目的となった特定の不動産が賃貸されている場合には,その賃料を取り立てることになります。
- 遺言執行に関する訴訟の当事者となります。
遺言の中で遺言執行者を指定する場合,二つのことに注意する必要があります。
一つは,弁護士が遺言執行者として指定された場合,当該弁護士は,相続人のうちの誰か特定の者と知己を得ている場合が多いですが,仮に,当該遺言を巡って,遺言無効や遺留分の紛争が発生した場合には,当該知己を得ている相続人の代理人となって,他の相続人と争うことは弁護士倫理上許されないというルールになっていることです。したがって,将来,遺言を巡って紛争が発生することが予想される場合には,当該弁護士を遺言執行者として選任すべきかどうか,よく考える必要があります。
もう一つは,遺言で定めた遺言執行者が遺言者よりも先に死亡した場合には,遺言の中では遺言執行者がいなくなったことになってしまいます。それでは心配なので,遺言執行者は複数人指定するとよいと考えられます。
法律事務所では,公正証書遺言の作成とあわせて遺言執行者をお引き受けいたします。公正証書遺言の作成は依頼者の皆様と十分にご相談の上,遺言者の最終意思を正確に反映する内容にしたいと思います。また,遺言執行者として,複数の弁護士がチームを形成して遺言執行者の指定をお受けすることによって,遺言執行者の一人に不慮のことがあった場合にも備えを置き,遺言者の公正証書遺言を厳重に保管管理し,相続が開始され次第,迅速かつ的確に遺言執行の業務を行います。