弁護士の職務とは何か。
手掛かりとなるのは,弁護士法3条1項の「弁護士は,当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によって,訴訟事件,非訟事件及び審査請求,再調査の請求,再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うことを職務とする。」という規定です。
しかし法律事務所も含めて実際に弁護士が扱う業務の範囲は,この規定の中にとどまらず,ずっと広いものです。考えてみると,この規定は弁護士法72条の法律事務の弁護士の独占との関係において,弁護士に独占させる法律事務を定義づけたものであり,弁護士が実際に担当している業務について定義づけたものではありません。ましてや,弁護士が世のため人のために担当すべき業務を指し示すものでもありません。弁護士である自分が世のため人のために何をすべきなのか,何をするのかの問題は,個々の弁護士の全人格的な判断に委ねられています。
私は弁護士の仕事は言語的コミュニケーションによって,正義と衡平の実現に寄与することであると思います。弁護士の活動には必ず,依頼者と相手方等の利害関係人がいます。依頼者との関係はヒアリングやカウンセリングであり,相手方等の利害関係人との関係はコミュニケーションやネゴシエーション(交渉)です。いずれも言語的コミュニケーションであり,もちろん法律・判例・学説の知識や経験だけで成り立つものではありません。しかもそれは,正義と衡平の実現に寄与すべきものです。
ホームページを改訂するにあたり法律事務所のすべての業務内容を棚卸し,全体的に考察することができたため,改めて弁護士の職務の原点に立ち返るきっかけとなりました。