2007.10.02
ニュース
民商法の典型契約の意味-小粥太郎『民法の世界』(商事法務,2007)を読んで。
民法には,売買・賃貸借・消費貸借等の契約,また,商法にも,(商事)売買,交互計算,匿名組合等の契約について定めがあります。これを典型契約と言うのですが,これらの典型契約については,従来,当事者の契約においてとくに定めなかった場合に補充的に意味を持つとされており,紛争が起こったときにも,個々の契約書の条項は重視されるものの,当該契約が典型契約に該当するかどうか,該当するとした場合,典型契約のどの条項が適用されるのか,という議論は余りなされてこなかったように思います。しかし,消費者契約法10条には,「民法商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し,消費者の権利を制限し,または消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって,民法1条2項に規定する基本原理(信義誠実,当職注)に反して消費者の利益を一方的に害するものは無効とする」と規定されたことを契機に,典型契約の規定の存在意味を見直そうという気運が高まっているようです。大学の法学部を卒業されてしばらく経っている法務の担当者の方は,一度,民法の教科書,とくに最近に発行されたものを読み直してみると新しい発見があると思います。なお,タイトルの本も,若い学者が新しい視点で書いている点が新鮮です。