2011.10.15
「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」には,放置するといずれは居住者等の生命,身体又は財産に対する危険が現実化することになる瑕疵も含まれる。
最判平成19年7月6日にいう,「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」とは,居住者の生命,身体又は財産を危険にさらすような瑕疵をいい,建物の瑕疵が,居住者等の生命,身体又は財産に対する現実的な危険をもたらしている場合に限らず,当該瑕疵の性質に鑑み,これを放置するといずれは居住者等の生命,身体又は財産に対する危険が現実化することになる場合には,当該瑕疵は,建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵に該当すると解するのが相当であるとする。」(最判平成23年7月21日)
さらに,23年判決は「建物の所有者は,自らが取得した建物に建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵がある場合には,当該瑕疵の修補費用相当額の損害賠償を請求することができるものと解され,上記所有者が,当該建物を第三者に売却するなどして,その所有権を失った場合であっても,その際,修補費用相当額の補填を受けたなど特段の事情がない限り,一旦取得した損害賠償請求権を当然に失うものではない」
建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵とは,現実的な危険のある場合だけではなく,これを放置するといずれは居住者等の生命,身体又は財産に対する危険が現実化することになる場合も含むということで,設計・施工業者の責任の範囲は広がりました。さらに,当該建物を第三者に売却するなどして,その所有権を失った場合であっても,一旦取得した損害賠償請求権を当然に失うものではない,としています。
大地震等をきっかけとする昨今の建物の安全性に対する国民の期待からすると,建物の基本的な安全性の確保については,一般的な保護法益があるといえ,設計・施工業者は十分に配慮する必要がありますね。