2015.04.09
会社法改正⑥ 【役員等の責任限定契約】責任限定契約(役員等の対会社責任を最低責任限度額に限定する契約)の対象者が,社外取締役又は社外監査役から,業務執行を行わない取締役又は監査役に変更されました。
役員等の任務懈怠責任を軽減する方法としては,(a)株主総会決議による軽減,(b)取締役会決議による軽減,(c)責任限定契約による軽減の3種類があります。責任限定契約については,事前に責任を軽減することにより人材確保に資する点に特徴があります。また,(a)(b)の方法は手続等が煩雑であるため,責任限定契約が実務上よく用いられています。
従来は,責任限定契約を締結することができる取締役及び監査役は,それぞれ社外取締役及び社外監査役に限られていました。他方,本改正では社外取締役等の要件が厳格化されました(会社法改正③参照)。これにより,改正前は社外取締役等であった者が社外性を失い,責任限定契約を締結できなくなる可能性があります。
しかし,本改正により社外性を失う者であっても,知識・経験等の面で,監督・監査機能を実効的に果たすと考えられる者については,引き続き責任限定契約を締結できるようにしておくべきだと考えられます。また,業務執行に関与せず,もっぱら経営に対する監督・監査を行うことが期待される者については,その責任が発生するリスクを自ら十分にコントロールすることができる立場にあるとは必ずしもいえないので,事前に責任を限定する余地を認める必要があります。加えて,業務執行に関与しない者であれば,責任を限定しても,任務懈怠の抑止という観点からの弊害も小さいと考えられます。
これらの点を踏まえ,本改正では,責任限定契約を締結することが可能な取締役等の範囲は社外取締役等か否かではなく,業務執行取締役等か否かが基準とされることになりました。
責任限定契約を締結するためには,定款に定めを置いていることが前提となります。現在,定款に定めを置いている会社であっても,責任限定契約を社外取締役や社外監査役とのみ締結する旨が定められている場合,非業務執行取締役等との間で責任限定契約を締結するには,定款変更が必要となります。適切な人材確保のためにも,責任限定契約の対象範囲と手続を把握しておくことが重要ですね。