2015.09.18
会社法改正⑪【株主名簿等の閲覧等の拒否事由】 株式会社と実質的に競争関係にある株主又は債権者であっても,濫用目的がない限り,当該株式会社の株主名簿等の閲覧等を請求することができるようになりました。
改正前会社法では,株主及び債権者(以下あわせて「請求者」といいます。)は,株主名簿及び新株予約権原簿の閲覧又は謄写を請求することができると定められていました(改正前125条2項・252条2項)。ただし,いわゆる名簿屋の濫用的な請求を防ぐとともにプライバシー保護に配慮するため,株主名簿等の閲覧等の拒否事由が明文で定められていました(改正前125条3項・252条3項)。そのうちの1つとして「請求者が当該株式会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営み,又はこれに従事するものであるとき」(改正前125条3項3号・252条3項3号)との規定が置かれていました。
この規定は,改正前会社法の制定時に,株主名簿等からも会社の営業秘密が把握される可能性があるとの理由により,会計帳簿の閲覧等請求権(改正前433条2項3号)とつじつまを合わせる形で設けられました。しかし,会計帳簿と異なり,株主名簿等について一般に営業秘密が含まれているとは考えにくく,実質的に競争関係にあるというだけで株主名簿等の閲覧等の拒否を正当化することはできないという批判がありました。
そこで,改正法では,「請求者が当該株式会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営み,又はこれに従事するものであるとき」との規定は削除されました。ただし,改正前と同様に,これらの者からの株主名簿等の閲覧等の請求が「権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき」(改正会社法125条3項1号・252条3項1号),「当該株式会社の業務の遂行を妨げ,又は株主の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき」(同125条3項2号・252条3項2号)など濫用的なものである場合には,閲覧等を拒否することができるとされています。
今回の改正により,株式会社と実質的に競争関係にある請求者でも,委任状勧誘等の目的で株主名簿等の閲覧等を請求することができるようになりました。株主名簿等の閲覧等を拒否すべきと考える場合には,濫用目的であることをきちんと立証できるようにする必要がありますね。