2015.06.23
会社法改正⑨【親会社による子会社株式等の譲渡】 親会社が子会社株式等を譲渡する場合であって,①子会社株式等の帳簿価額が親会社の総資産額の5分の1を超え,②株式等譲渡の効力発生日において子会社の議決権の総数の過半数の議決権を有しないときには,親会社において株主総会の特別決議を経なければならないこととされました。
改正前会社法では,親会社が子会社の株式等を第三者に譲渡する場合,親会社の株主総会の承認を受けねばならない旨の明文規定はありませんでした。しかし,持株会社が普及したこともあって,親会社が子会社の株式等を第三者に譲渡して当該子会社の事業に対する支配を失う場合には,親会社は当該株式譲渡により事業譲渡と同程度の大きな影響を受けることになります。そこで,このような子会社株式等の譲渡についても,事業譲渡と同様の規制を設ける必要があるとされました。
改正会社法は,以下の二つの要件を満たす子会社株式等の譲渡について,親会社の株主総会の特別決議によって当該譲渡にかかる契約の承認を受けなければならないとしています(改正法467条1項2号の2・309条2項11号)。
①当該譲渡により譲り渡す株式又は持分の帳簿価額が,親会社の総資産額の5分の1を超えるとき。
②親会社が,効力発生日において子会社の議決権の総数の過半数の議決権を有しないとき。
要件①は,親会社による子会社株式等の譲渡に株主総会の承認を必要とすると,意思決定の迅速性を損なうとの批判に配慮し,株主総会の承認を必要とする子会社株式等の譲渡を一定の重要性を有するものに限ることとしたものです。要件②は,親会社が効力発生後に過半数の株式を有しているのであれば,事業への支配を失わないので,事業譲渡と類似とはいえないという点を踏まえたものです。
上記の要件に該当する子会社株式等の譲渡を行う場合には,株主総会の承認の手続が必要となるので注意しましょう。