2016.04.10
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中国の公司法における董事の解任② (弁護士劉奔)中国に進出している日本企業が多く採用している中外合弁会社の場合注意が必要です。中外合弁会社とは,外国投資者と中国企業が共同で設立する有限責任会社のうち,それぞれが出資比率に応じた利益配当をうける会社のことをいいます(中外合弁企業法1条)。
中外合弁会社に関する基礎となる法律が合弁企業法であり,同法によって合弁会社の組織機構等の大枠が定められています。組織機構等の詳細は,同法の実施細則である合弁企業法実施条例に委ねられています。また,公司法の一般的な規定も同会社に適用されます(公司法217条)。
公司法において,通常,株主会は会社の最高意思決定機関ですが,中外合弁企業では董事会が最高意思決定機関となります(合弁企業法実施条例30条)。そうすると,その機関設計と矛盾する株主会は設置できないものと解釈されることが一般的です。したがって,董事の解任につきましては,株主会によるのではなく,各出資者が解任することになっています(中外合弁企業法6条参照)。日本出資者側は,自己が任命した董事を解任できますが,中国出資者側が任命した董事を解任できません。つまり,中国出資者側の董事と日本出資者側の董事の間で,経営方針について不一致が生じた場合は,日本出資者側は出資比率にかかわらず中国出資者側の董事を解任できないこととなります。
中外合弁会社を選択するデメリットの一つといえ,株主総会の多数決により取締役を解任することができるとする日本の会社法とは異なるものですので注意が必要です。