遺言者自ら赤いボールペンで文面全体に斜線を引いた遺言書は,「故意に遺言を破棄したといえ無効」とする判断が昨年最高裁で示されました(最判平成27年11月20日)。この判決のように,自筆証書遺言の方式や効力をめぐって争いとなる事例は少なくありません。遺言は,公正証書で作られることをお勧めいたします。 |トピックス|しょうぶ法律事務所 遺言者自ら赤いボールペンで文面全体に斜線を引いた遺言書は,「故意に遺言を破棄したといえ無効」とする判断が昨年最高裁で示されました(最判平成27年11月20日)。この判決のように,自筆証書遺言の方式や効力をめぐって争いとなる事例は少なくありません。遺言は,公正証書で作られることをお勧めいたします。 |トピックス|しょうぶ法律事務所

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遺言者自ら赤いボールペンで文面全体に斜線を引いた遺言書は,「故意に遺言を破棄したといえ無効」とする判断が昨年最高裁で示されました(最判平成27年11月20日)。この判決のように,自筆証書遺言の方式や効力をめぐって争いとなる事例は少なくありません。遺言は,公正証書で作られることをお勧めいたします。

 判決(最判平成27年11月20日)によると,14年前に死亡した男性が,生前,ほぼすべての財産を長男に相続させるとした自筆の遺言を作成しましたが,その後,遺言書の左上から右下にかけて自ら赤いボールペンで斜線を引いていました。財産をほとんど相続できなかった長女が,「遺言は故意に破棄された」として遺言の無効の確認を求めて提訴した事案です。
 一審は,男性が遺言を撤回する意思で斜線を引いたことは認めましたが,「元の文字が判読できる程度の斜線では効力は失われない」と判断し,長女の請求を退け,二審もこの判断を維持しました。
 最高裁は,「赤いボールペンで文面全体に斜線を引く行為は,一般的には遺言の全効力を失わせる意思の表れとみるべきだ」と指摘し,「故意に遺言を破棄したといえ、効力はない」と結論付けました。
 一審・二審は,遺言書に斜線を引く行為は,元の文字が判読できる程度の抹消であるから,「遺言書の破棄」(民法1024条前段)ではなく「変更」(民法968条2項)に当たり,「変更」が民法968条2項の方式に従ってなされていない以上,「変更」の効力はなく,遺言は元の文面のものとして有効であるとの考え方にたっていました。
 しかし,最高裁は,遺言者が故意に遺言書の文面全体に斜線を引く行為は,一般的には,遺言書の全体を不要のものとし,そこに記載された遺言のすべての効力を失わせる意思の表れ(遺言書全体をもはや遺言書として使わないという意思の表れ)とみるべきだと指摘しました。元の文字を判読できる程度の抹消であっても,この事案のように文面全体に故意に斜線を引く行為(遺言書の一部の抹消にとどまらない行為)は,「変更」(民法968条2項)ではなく「故意に遺言書を破棄したとき」(民法1024条前段)に当たり,これにより遺言者が遺言を撤回したものとみなされると判断しました。
 民法は遺言の方式について厳格に定めており,この事案のように,遺言の効力をめぐって争いになることも少なくありません。遺言書の作成をお考えになる際には,公正証書で作成されることをお勧めいたします。

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