2022.11.21
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懲戒解雇の場合に退職金を全額不支給とした処分を有効とする判決が出ました。
従業員を懲戒解雇とした上、退職金を全額不支給とした事案について、いずれの処分も有効とした東京高裁の判決が出ました(東京高判令和3年2月24日判時2508号115頁)。
退職金には賃金の後払いという側面もあることから、裁判所は、全額不支給とすることには慎重なところがあり、「永年の勤続の功を抹消してしまうほどの重大な不信行為があることが必要」とすることが多いです。
しかし、今回の東京高裁の判決は、原則として懲戒解雇を受けた者への退職金を不支給とすることができる、ただし、退職金の不支給が信義誠実の原則に照らして許されないと評価される場合には裁量権の濫用となる、とし、企業側の裁量を従来よりも広く認めました。
ただ、今回は、銀行員が内部資料を漏洩したという悪質な事案でしたので、従来の判断基準でも退職金を不支給とすることが認められる余地があったとも思われます。
今回の判決が出たからといって、従来の判断枠組みがすぐに変わってしまうわけではないでしょう。
懲戒解雇時に退職金を不支給とする場合は、従来の枠組みに沿って、①非違行為の重大性・背信性の程度、②その従業員の勤続年数や勤務態度、処分歴、③自社の退職金の性質(功労報償的性格の有無・強弱)・金額、④過去の同種処分事例との比較、などを慎重に検討し、あらかじめ証拠資料も準備しておくとよいです。