2023.12.15
事業場外みなし労働時間制をテレワークで活用するには?
テレワークはオフィスなどといった事業場の外で行うものなので、事業場外みなし労働時間制(労働基準法38条の2)とは相性がよいといえます。
事業場外みなし労働時間制が適用できれば、実際の労働時間を管理する必要はなく、あらかじめ定められた時間数が労働時間とみなされます。
この制度を採用してテレワークを行えると、労働者が自分のスケジュールに合わせて仕事を進めることができますし、テレワークで生じがちな「中抜け時間」についても管理する必要がなくなって、柔軟な働き方が実現できます。
労働時間とみなされる時間数は、
- 所定労働時間
- 1.の時間を超えて労働することが必要となる場合には、その業務の遂行に通常必要とされる時間
- 2.に代えて、労使協定で定めた時間
となります。
なお、みなし労働時間は、1日単位で設定する必要があります。
事業場外みなし労働時間制を使えるのは、会社側の具体的な指揮監督が及ばない事業場外で業務が行われており、労働時間の算定が困難な場合です。
逆にいうと、テレワーク中でも、会社が従業員の労働時間を管理している場合などは、事業場外みなし労働時間制を利用することはできません。
厚生労働省の「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」では、次の2つの要件を挙げ、これらを満たす場合、事業場外みなし労働時間制を適用できるとしています。
1 パソコンなどの情報通信機器を「常時通信可能な状態におくように」と会社から指示されていないこと
上記ガイドラインでは、1の要件を満たす例として、次のようなケースが挙げられています。
- 勤務時間中に労働者が自分の意思で通信回線を切断できる
- 通信回線自体の切断はできず、会社からの指示はパソコンなどで行われているけれども、労働者自身の意思でパソコンなどから離れることができ、応答のタイミングも労働者自身で決めることができる
- 会社支給の携帯電話等を持っていても、応答するかどうかや、折り返しの連絡をいつするかについて、労働者において判断できる
2 随時使用者から具体的な指示を受け、それに基づいて業務をしているのでないこと
2の要件については、会社からの指示が、業務の目的、目標、期限等の基本的事項にとどまり、作業量や作業の時期、方法等を具体的に特定するものではない場合は、要件を満たすとされています。
一言で「テレワーク」と言っても、会社によって実態は様々です。
それぞれの会社にどのような制度が合うのか、弁護士としてご相談を受けた際には、それぞれの制度の特徴を踏まえて、それぞれの会社の実態に合うようにアドバイスを行うことになります。