2023.06.05
ニュース
株主総会会場に入場できる株主の制限に関する裁判例が出ました①~新型コロナウイルス感染症と株主総会
新型コロナウイルス感染症の拡大は、株主総会のあり方にも大きな影響を与えました。
それまでは、株主総会への出席を希望する株主は全て出席できるようにしなければならない(違反すると株主総会決議の取消事由になる)と考えられてきました。
しかし、新型コロナウイルス感染症の流行により、いわゆる「3密」を避けるために多くの人が集まることを制限する必要が生じました。
このことは当然、株主総会にも当てはまりました。
そこで、経済産業省は、新型コロナウイルス感染症が拡大する中での株主総会の開催に関する一般的な考え方を整理したものとして、令和2年4月、「株主総会運営に係るQ&A」を公表しました。
この中では、新型コロナウイルス感染拡大防止のために以下のような措置をとることも可能であるとされました。
- 株主総会の招集通知等において、株主に来場を控えるよう呼びかける
- 株主総会に入場できる株主の人数を制限する
- 会場の規模を例年より縮小する
- 会場に株主が出席していない状態で株主総会を開催する
- 株主総会への出席について事前登録制を採用して事前登録者を優先的に入場させる
- 発熱や咳などの症状を有する株主の入場を断ったり、退場を命じる
弁護士なども、前代未聞の状況の中、手探りで対応を模索してきました。
こうした流れの中、株主総会を開催するに当たり、事前登録した株主の中から抽選で入場できる株主を選ぶ、という会社が出てきました。
これに異を唱える株主が、総会参与権等を主張して、株主総会開催の差止めの仮処分命令(予備的に、株主総会に出席して株主権を行使することの妨害禁止の仮処分命令)の申立てをしたのが、静岡地裁沼津支部令和4年6月27日決定・資料版商事法務461号137頁の事案です。