2023.07.21
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遺言者が亡くなる前に推定相続人の一部が亡くなった場合についての裁判例が出ました。
東京地方裁判所で、「相続させる」旨の遺言で推定相続人A、B、C、Dが遺産を受け継ぐことになっていたのに、このうちAとBが遺言者の死亡前に亡くなってしまった、という場合の遺言の効力に関する裁判例が出ました(東京地裁令和3年11月25日・判時2521-84。以下「本判決」といいます。)。
本判決では、このような場合も、必ずしも他の生存する推定相続人(C、D)に特定の遺産を相続させる意思が失われるとはいえず、C、Dに関する部分の遺言は有効であると判断されました。
実は本判決以前に、最高裁判所は、遺産を特定の推定相続人1名に単独で「相続させる」旨の遺言について、その推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合は、特段の事情のない限り、遺言は効力を生じない、と判断していました(最判平成23年2月2日・民集第65巻2号699頁。以下「平成23年最判」といいます。)。
平成23年最判に沿うと、本判決の事案でも、遺言者の死亡前に推定相続人が死亡しているのですから、遺言は無効となりそうにも思えます。
しかし、東京地裁は、死亡した推定相続人に関する部分の遺言の効力が問題となった平成23年最判と、生存している他の推定相続人に関する部分の効力が問題となる本件では事案が異なるとし、上記のような判断をしました。
ある判例でどのような事案までカバーされるか、自分の受け持つ事案もカバーされているとの主張をどのように組み立てるかは、弁護士にとって悩みどころの一つです。