2023.07.07
バーチャル株主総会に出席すると、事前に行使した議決権の効力はどうなるのか?①~出席型のハイブリッド型バーチャル株主総会の場合
バーチャルオンリー株主総会とハイブリッド型バーチャル株主総会では、株主総会にインターネット等の手段を用いてバーチャルで出席し、議決権を行使することが認められます。では、事前に書面などで議決権行使をしていたにもかかわらず、当日の株主総会にバーチャルで出席した株主がいた場合、事前の議決権行使はどのように扱えばよいのでしょうか?
従来のリアルの株主総会では、事前に議決権を行使していた株主が株主総会に出席した場合、受付をした時点で事前の議決権行使は撤回したものと扱うのが一般的でした。
バーチャル株主総会でも、同様の取扱いとすることは可能です。
しかし、そうすると問題も出てきます。
バーチャルで株主総会に出席する株主の中には、当日たまたま時間が空いた、という状況で参加する方など、急な決断により出席する株主、予定が流動的な株主がいる割合が、リアルの株主総会の場合よりも相対的に高いと考えられます。そうした株主は、他の用事が入ると議決権行使をする前に退出してしまう可能性が、リアルの株主総会に出席する株主よりも高いでしょう。
もし当日の株主総会にバーチャルで出席した時点で事前の議決権行使が撤回されたと扱ってしまうと、途中退出の場合は議決権を行使しなかった(棄権した)こととなってしまいます。
しかし、バーチャル株主総会においてまでそのような扱いをすると、棄権となる数が増えすぎてしまい、株主の意思を正確に反映できなくなる懸念があります。
そのため、バーチャルで出席した株主については、株主総会当日に新たに議決権を行使した時に、事前の議決権行使を撤回したものと扱うことも可能と考えられています。このような取扱いは、出席型のハイブリッド型バーチャル株主総会について、経済産業省の「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」でも紹介されています。
同実施ガイドでは、事前の議決権行使の効力がどのように扱われるかについては、あらかじめ招集通知等で通知することが必要であるとされています。
新しい制度で従来の取扱いをそのまま維持できるかどうか考える際に、具体的な問題点を想像して対処することは、弁護士などの法律家もよく行うことです。