2023.07.12
バーチャル株主総会に出席すると、事前に行使した議決権の効力はどうなるのか?②~バーチャルオンリー株主総会の場合
バーチャルオンリー株主総会においても、
- 急に出席することとした株主、予定が流動的な株主がいる割合が相対的に高いと考えられること
-
そうした株主は株主総会で議決権行使をする前に別の用事で退出してしまう可能性が比較的高いこと
- そのため、株主総会にバーチャルで出席した時点で事前の議決権行使が撤回されたと扱うと、棄権となる範囲が広すぎて、株主の意思を正確に反映できない懸念があること
は、出席型のハイブリッド型バーチャル株主総会の場合と同じです。
そのため、経済産業省・法務省の「産業競争力強化法に基づく場所の定めのない株主総会に関するQ&A」は、バーチャルオンリー株主総会における事前の議決権行使の効力の取扱いについて、以下のものなどが考えられると紹介しています。
- 株主がバーチャルオンリー株主総会のシステムにログインするなどした時点で、事前の議決権行使の効力を失わせる取扱い(従来のリアルの株主総会と同様の取扱い)
- 株主がバーチャルオンリー株主総会で議決権行使をした時点で事前の議決権行使の効力を失わせる取扱い
2.は、前回、出席型のハイブリッド型バーチャル株主総会に関してご紹介した取扱いと同様のものです。
バーチャルオンリー株主総会の場合、事前に議決権行使をした株主がバーチャルオンリー株主総会に出席した場合に、事前の議決権行使の効力がどのように取り扱われるかは、法令上、招集通知の記載事項とされています(産業競争力強化法66条2項による読替後の会社法299条4項、産業競争力強化法に基づく場所の定めのない株主総会に関する省令4条1号、3条3号)ので、必ず招集通知に記載しなければなりません。
以上のように、バーチャルオンリー株主総会や出席型のハイブリッド型バーチャル株主総会では、事前に議決権行使をした株主がバーチャルで株主総会に出席した場合、株主総会で新たに議決権行使を行使した時に事前の議決権行使の効力を失わせる取扱いが認められており、そちらの方が合理性がありそうに思えます。
ただ、会社の中には、リアルの株主総会と同様、出席した時点で事前の議決権行使の効力を失わせる扱いとしたところもありました。
出席型のハイブリッド型バーチャル株主総会もバーチャルオンリー株主総会も未だ実施例が少なく、実務の方向性にはまだまだ流動的な部分があります。
弁護士としても、今後の実務の流れを注視してまいります。