2023.03.14
借地借家法において契約更新を拒絶する場合などに必要とされる「正当事由」と都市再開発
借地・借家契約について、賃貸人側から更新を拒絶したり解約を申し入れたりする場合には「正当の事由」が必要であることが、借地借家法に定められています(第6条、第28条)。
借地借家法は、1991年(平成3年)に旧建物保護法、旧借地法、旧借家法を統合して成立したものですが、改正議論の際には、この「正当の事由」の内容をどのように規定するかも問題となりました。
問題となった点の一つは、開発促進論との関係です。
バブルの時期、都市再開発が盛んになりました。
その中で、借地や借家についても、「建物を取り壊して更地にし、土地を有効活用したい」などと主張して契約の更新拒絶や解約申入れをするケースが出てきたのです。
開発業界も、都市再開発を促進するため、借地・借家関係の解消を容易にする方向での法改正を求めていました。
その要望に沿う形で、契約解消の正当事由となる事情として、「土地の有効利用の必要性及び相当性」(借地契約)、「賃貸人による当該建物の大規模修繕、建替え等の必要性及び相当性」(借家契約)を加えることも検討の対象とされました。
しかし、これに対しては「借地借家法は当事者間の契約関係に関する法律(私法)であり、都市再開発促進という特定の政策的観点からの要請を持ちこむべきではない」との強い批判が起こり、そのような内容が改正法に盛り込まれることにはなりませんでした。
全体として、正当事由に関する規定の改正は、都市再開発促進論との関係が薄められる、若しくは否定される結果となりました。