2023.04.05
新型コロナウイルス感染症の蔓延と「不可抗力」による契約解消に関する裁判例が出てきています。~結婚式場のキャンセルに関する裁判例から
新型コロナウイルスの蔓延は、社会に大きな混乱をもたらしました。
特に当初は、突如として各種イベントや飲食を伴う会合、ひいては外出自体の自粛を求められるなどしたため、全く想定していなかった契約キャンセルが多く発生しました。
通常ならキャンセル料など発生するのでしょうが、天災、疫病などの「不可抗力」による場合にはキャンセル料を取ることはできない、と規定されている契約も多くあります。
では、新型コロナウイルス蔓延による契約解消はどのように扱われるのでしょうか?
これについて、結婚式場に関する裁判例が出てきています。
東京地裁は、新型コロナウイルスの蔓延により披露宴等をキャンセルした事例で、披露宴等を行うことが不可能であったとは認められないとして、利用者側が「不可抗力により婚礼を実施できなかったので、契約規定により契約は消滅した」と主張して求めた前受金全額の返還請求を認めませんでした(東京地判令和3年9月27日判例時報2534号70頁)。
他方、名古屋地裁は、同様の事案で、当時披露宴を開催することは現実的に不可能であるとの認識が一般的であり、利用者には解約したことについて帰責事由があるとはいえないから、契約上の取消料を請求できる場合に当たらないとし、式場側からの取消料請求を認めませんでした(名古屋地判令和4年2月25日裁判所HP〔令和2年(ワ)3686号ほか〕)。
新型コロナウイルスの流行によるトラブルを法律上どのように扱うかについては、未だ確立していない部分も多く、今後の動向が注目されます。