2023.06.09
ニュース
株主総会会場に入場できる株主の制限に関する裁判例が出ました②~決定の内容
ここ数年、株主総会における新型コロナウイルス感染拡大防止のため、株主総会に入場できる株主の人数などに制限が加えられてきました。
そうした制限方法の一つとして、事前登録した株主の中から抽選で株主総会に入場できる株主を選ぶという手段を選んだ会社が出てきました。
これに対し、株主が、総会参与権(株主総会に出席して、議題・議案に関する説明を求め、又は意見を陳述する権利)等を主張して、
- 主位的に、株主総会開催の差止めの仮処分命令の申立て
- 予備的に、株主総会に出席して株主権を行使することの妨害禁止の仮処分命令の申立て
をしました。
これらの申立てについて、裁判所は、次のように判断し、申立てをいずれも却下しました。(静岡地裁沼津支部令和4年6月27日決定・資料版商事法務461号137頁)
主位的申立てについて
- 希望すれば必ず株主総会に出席できる権利が株主にあるとは認められない。
- 仮に1.のような権利があるとしても、新型コロナウイルス感染拡大防止という公益目的のために出席する株主数を一定数に限定し、かつ、株主間の公平性を担保するために、事前登録者から抽選により出席者を選定する事前登録制を採用することは、やむを得ないものであり、合理性を欠くとは認められない。
予備的申立てについて
- 株主総会参与権の妨害排除請求権を観念する余地があるとしても、申立人らの株主提案の理由は株主総会招集通知に記載されており、申立人ら全員(303名)の出席が不可欠とはいえないこと、申立人らのうち約27%(83名)が抽選に当選している上、抽選に外れた株主も、当選した株主から委任を受ければ代理出席という形で出席できるので、事前登録による抽選制の採用により、株主提案の趣旨説明の機会が奪われたとすべき状況は認められないことから、会社の措置は、総会参与権を不当に侵害するものとは認められない。
この裁判例をどのように受け止めるべきなのか、学会や弁護士の間でも議論が交わされています。