2023.06.19
株主総会前日の営業時間終了20分前を議決権行使書面の行使期限とした事例に関する裁判例がでました。
株主総会の議決権行使書面の行使期限は、定款に定めがある場合を除き、原則として「株主総会の日時の直前の営業時間の終了時」とされています(会社法311条1項、同施行規則69条)。
ところが、これに反し、議決権行使書面の行使期限を、株主総会前日の営業時間終了20分前としてしまった事例があり、裁判になりました。この事例では議決権行使書面の行使期限とされたのは「午後5時」だったのですが、この会社の「営業時間の終了時」は「午後5時20分」だったのです。そのため、この事例では、議決権行使書面の行使期限について会社法等の原則とは異なる定めがされたと言わざるを得ませんでした。
議決権行使書面の行使期限を原則と異なるものとする場合、招集通知を発した日から2週間を経過した日以後の時に期限を設定しなければなりません(会社法298条1項5号、同法施行規則63条3号ロ)。
つまり、招集通知の発送日と株主総会の間に15日間をおかなければならない(株主総会の16日前に招集通知を発送しなければならない。)のです。
しかし、上記裁判例の会社では、招集通知を株主総会の15日前に発送していたため、問題となったのです。(なお、議決権行使書面の行使期限を原則どおり「株主総会の日時の直前の営業時間の終了時」(午後5時20分)としていれば、この発送日で問題ありませんでした。)
東京高裁は、会社の措置は議決権行使書面の行使期限に関する規定に違反することは認めました。
しかし、
- 原則どおりの行使期限を採用しても期限が20分間延長されるだけであること
-
午後5時を営業時間の終了とすることがビジネス慣行上広く見られること
に照らし、瑕疵の程度は重大ではないと判断しました。
そして、実際のところその間に到達した議決権行使書面もなかったことから、瑕疵は決議にも影響を及ぼさなかったとして、株主総会決議の取消しを求める訴えを裁量棄却しました。
この事例では裁判所の裁量棄却により会社側は救われましたが、いつもこのような救済があるとは限りません。
弁護士や法務担当者は、招集手続等に瑕疵がないよう、個々の会社の状況(営業時間等)を確認するよう心がけていくべきところです。