2024.12.13
債権回収を円滑にするための契約書のポイント①~所有権留保
債権回収は、企業にとって重要な問題です。
大口の取引先が倒産して売掛金が回収できない、となると、自社の経営にも深刻なダメージとなるからです。
実は、取引に関する契約の際にも、債権回収のために備えておけることがあります。
ここでは、いくつかの条項例をご紹介していきます。
1 商品の所有権を留保する条項
商品を納入した取引先が破産してしまった場合、未払代金の回収はほとんど期待できなくなります。
こうした場合、せめて納品した商品は回収したいところです。
ところが、売買契約では、所有権の移転時期について特に定めていないと、契約が成立した時点で、目的物の所有権が買主に移転してしまいます(なお、継続的売買契約の場合、検品後などに所有権が移転すると定められていることが多くあります。)。
このような契約になっている場合、代金未払いのうちに取引先が破産してしまえば、もはや「破産者である取引先の所有物」となっている商品には、手出しができなくなってしまいます。
このようなことにならないようにするためには、次のような所有権留保のための条項を契約書に盛り込むことが考えられます。
本商品(動産)の所有権は、売買代金全額を支払った時、甲から乙に移転する。
この条項を盛り込んであれば、代金未払いのまま取引先が倒産してしまった場合でも、納品した商品は未だに「売主の所有物」ということになりますので、所有権に基づいて商品を引き上げることが可能になります。
ただし、所有権があるからといって、その商品を現に占有している取引先の承諾を得ないままに引き上げを実行してしまうと、窃盗罪などに問われる可能性がありますのでご注意ください。
また、継続的に同種の商品を納入している場合、代金未払いの商品と支払済みの商品を区別できるようにしておかないと、商品を引き上げられなくなるおそれがあります。
債権回収に備えた契約条項をお考えの場合や商品の引き上げを検討されている場合には、状況に応じた適切な対応が必要になりますので、弁護士にも相談してみましょう。